「オリバコ」を開発することになった原点には、私自身の被災経験があります。熊本地震のとき、私の家も身内も被害を受け、支援に向かった先々で、今も忘れられない光景に出会いました。

被災直後に目の当たりにした“現実”
身内には障がいのある母がいます。私の家も地震の被害を受けたものですから、最初は地域の公民館や体育館に避難しました。ですが1日、2日と過ごすうちに、その環境の厳しさを痛感しました。当然多くの人が避難していますが、仕切りは段ボールだけ。プライバシーは守れず、人目も気になります。体を休めるどころか、心身の負担が増していきました。
そして現場では、こんな場面がいくつもありました。
- 小さなお子さんを抱えたお母さんが、廊下のパイプ椅子で眠るしかない
- ペット同伴が難しく、体育館に入れないご家族が車内で一夜を明かす
- 着替えをするにも周りの目が気になるが、場所がなく、トイレで着替えざるを得ない
- 水が流れないトイレに、バケツで水を運ぶ人たち
- ルールや制約も多く、弱い立場の方ほど肩身が狭い思いをする
「現場に行った人でなければ分からない苦労」が、確かにそこにありました。

カーポートの下に生まれた“小さな安心”
周りの目が気になり、心身ともに休めない日々が続きましたので、数日後、私たちは車中泊に切り替えました。私たちは被災した家の横にあったカーポートにブルーシートや木材を持ち込み、簡易的な住まいへと作り替えたのです。
必要なものは家から運び込み、トイレは自宅を使う。決して快適ではないけれど、「屋根があり、囲われた空間で横になれる」だけで、体育館や車中泊よりも安心して呼吸できる感覚がありました。
この体験が、私の中で1つの問いを生みました。
「もし、災害直後から運べる“家族単位の空間”があったなら——」
その問いに対する答えが「ORIBAKO」
こうして生まれたのが、折りたたみ・移動式カーポートシェルター「ORIBAKO(オリバコ)」です。
- 普段は車を守るカーポートとして暮らしの中に
- 非常時には家族を守るシェルターとしてプライバシーと安心を
- トラックで運べる折りたたみ構造で、被災直後から各地へ展開
- 家族単位の居住空間を確保し、着替え・休息・就寝・最低限の生活ができる
- ペットと一緒に過ごせる設計を目指す
- 電源・照明(ソーラー等)や水の確保
- 連結運用など、現場に合わせた柔軟な拡張も検討
私たちは、体育館避難のような“集まる避難”だけでなく、「家族がストレスなく、できるだけ快適に落ち着ける避難」という選択肢を社会に増やしたいと考えたのです。

日常と非常時をつなぐ備え
オリバコは、日常と非常時をつなぐための道具です。
いつもは暮らしのそばで車を守り、いざというときには家族の命と心を守る。被災地で見た、子ども・高齢者・障がいのある方・ペットと暮らす家族が抱える切実な不便を、少しでも軽くしたい。その一心で開発を進めています。
結びに
熊本地震の体験が、私たちに「空間が変われば、心の余裕も変わる」ことを教えてくれました。
あの日の不便や不安苦悩を繰り返さないために。
家族が安心して過ごせる空間を、必要な場所へ、必要なときに届ける。
それが、私たちフォーバイフォーオリバコの使命だと考えています。
2025年12月の発売発表に向けて、開発を進めて参ります。